食物繊維の有用性
2013年12月10日
臨床における食物繊維の有用性1
Tです。
昨日参加した某研修会で気になったのが、臨床におけるPHGGの有用性の話でした。
2004年にESPENが食物繊維の有用性に関して、Consensus recommendationsを出しています
http://www.clinicalnutritionsupplements.com/article/S1744-1161(04)00029-8/fulltext#section1
ので、数回に分けて訳していこうと思います。
(以下、誤訳の可能性があるので気になる人は原文を読むことを勧めます。)
Consensus recommendations on the effects and benefits of fibre in clinical practice
臨床における食物繊維の効果及び有効性に関するコンセンサスの提言
・炎症性腸疾患
食物繊維であるオリゴ多糖は、腸内嫌気生菌により異なる程度に発酵する。このことが腸管内の環境に2つの影響を与える(pHの低下及び酢酸・プロピオン酸・酪酸といった短鎖脂肪酸(SCFA)の製造)。
酪酸は腸管細胞にとって好ましいエネルギー基質である。酪酸は酸化してアセチルCoAになり、細胞内の多くの代謝経路、細胞膜の重要な成分であるコレステロールやリン脂質の合成および粘液合成に関与する。不充分な酪酸の酸化は腸内の硫酸還元菌の過剰な存在によって起こる。アセチルCoA代謝経路を脅かして細胞膜構造や粘液を変質させ、炎症を引き起こし永続化させることもある。また、酪酸は転写因子NF-κBの活性化阻害を介して免疫調節効果を発揮することが実験的に示されている。
腸管のpHが低下すると細菌叢が変化すると考えられる。又、高度発酵性のオリゴ糖を人間の腸管内発酵系に加える事で乳酸菌やビフィズス菌のコロニー数を増加させ、ClostridiaやBacteroidesのコロニー数を減少させることが実験的に示されている。プレバイオティクスの特性を有する他の多糖類(イヌリンを除く)に関しては、説得力のある研究は発表されていない。
(・・・続く)
昨日参加した某研修会で気になったのが、臨床におけるPHGGの有用性の話でした。
2004年にESPENが食物繊維の有用性に関して、Consensus recommendationsを出しています
http://www.clinicalnutritionsupplements.com/article/S1744-1161(04)00029-8/fulltext#section1
ので、数回に分けて訳していこうと思います。
(以下、誤訳の可能性があるので気になる人は原文を読むことを勧めます。)
Consensus recommendations on the effects and benefits of fibre in clinical practice
臨床における食物繊維の効果及び有効性に関するコンセンサスの提言
・炎症性腸疾患
食物繊維であるオリゴ多糖は、腸内嫌気生菌により異なる程度に発酵する。このことが腸管内の環境に2つの影響を与える(pHの低下及び酢酸・プロピオン酸・酪酸といった短鎖脂肪酸(SCFA)の製造)。
酪酸は腸管細胞にとって好ましいエネルギー基質である。酪酸は酸化してアセチルCoAになり、細胞内の多くの代謝経路、細胞膜の重要な成分であるコレステロールやリン脂質の合成および粘液合成に関与する。不充分な酪酸の酸化は腸内の硫酸還元菌の過剰な存在によって起こる。アセチルCoA代謝経路を脅かして細胞膜構造や粘液を変質させ、炎症を引き起こし永続化させることもある。また、酪酸は転写因子NF-κBの活性化阻害を介して免疫調節効果を発揮することが実験的に示されている。
腸管のpHが低下すると細菌叢が変化すると考えられる。又、高度発酵性のオリゴ糖を人間の腸管内発酵系に加える事で乳酸菌やビフィズス菌のコロニー数を増加させ、ClostridiaやBacteroidesのコロニー数を減少させることが実験的に示されている。プレバイオティクスの特性を有する他の多糖類(イヌリンを除く)に関しては、説得力のある研究は発表されていない。
(・・・続く)
bigvoice212065 at 00:08|Permalink│Comments(0)
2013年12月11日
臨床における食物繊維の有用性2
Tです。
臨床における食物繊維の有用性の続きです。
(以下、誤訳の可能性があるので気になる人は原文を読むことを勧めます。)
エビデンス
活動期の潰瘍性大腸炎に対しても維持療法に対しても、食物繊維の潜在的な治療効果に関していくつかの臨床データがある。多くの発酵による代謝物の中で酪酸が投与主成分として扱われている。酪酸は遠位の活動期大腸炎(又は放射線性直腸炎)に対して直腸投与され、短いシリーズ(?)の患者において、有望な結果を示している。繊維-多糖類の経口投与は2つの研究で行われている:回腸-肛門のpouch(回腸嚢炎)の活動性炎症の治療と、潰瘍性大腸炎における寛解維持療法の研究である。
イヌリンは活動期の腸炎で試験された唯一の多糖類である。プラセボと比較し、結腸内pHの有意な低下を示し、酪酸濃度を有意に上昇させ、BacteroidesとBacteroides fragilisのコロニー数を有意に減少させた。回腸嚢炎で、ほとんどが重症の潰瘍性大腸炎で結腸切除の既往がある患者における3週間に渡ったクロスオーバー試験だった。イヌリン投与の結果、症状、内視鏡的、組織学的指標の有意な改善が見られた(エビデンスレベルII)。
Plantago ovataは、潰瘍性大腸炎における1年間の寛解維持療法において5-ASA (標準的治療)と同等の有効性を多施設、無作為化5-ASA対照試験で示した(エビデンスレベルII)。
これまで明らかになっている限りにおいて、クローン病には食物繊維が有効であるというエビデンスは存在しない。この事から、既知の潜在的治療効果は、主に大腸で行われ、小腸ではあまり行われない発酵プロセスに関連している可能性がある。しかし知る限りにおいて、大腸クローン病の発酵プロセスにおける大規模なデータは存在しない。
(・・・続く)
臨床における食物繊維の有用性の続きです。
(以下、誤訳の可能性があるので気になる人は原文を読むことを勧めます。)
エビデンス
活動期の潰瘍性大腸炎に対しても維持療法に対しても、食物繊維の潜在的な治療効果に関していくつかの臨床データがある。多くの発酵による代謝物の中で酪酸が投与主成分として扱われている。酪酸は遠位の活動期大腸炎(又は放射線性直腸炎)に対して直腸投与され、短いシリーズ(?)の患者において、有望な結果を示している。繊維-多糖類の経口投与は2つの研究で行われている:回腸-肛門のpouch(回腸嚢炎)の活動性炎症の治療と、潰瘍性大腸炎における寛解維持療法の研究である。
イヌリンは活動期の腸炎で試験された唯一の多糖類である。プラセボと比較し、結腸内pHの有意な低下を示し、酪酸濃度を有意に上昇させ、BacteroidesとBacteroides fragilisのコロニー数を有意に減少させた。回腸嚢炎で、ほとんどが重症の潰瘍性大腸炎で結腸切除の既往がある患者における3週間に渡ったクロスオーバー試験だった。イヌリン投与の結果、症状、内視鏡的、組織学的指標の有意な改善が見られた(エビデンスレベルII)。
Plantago ovataは、潰瘍性大腸炎における1年間の寛解維持療法において5-ASA (標準的治療)と同等の有効性を多施設、無作為化5-ASA対照試験で示した(エビデンスレベルII)。
これまで明らかになっている限りにおいて、クローン病には食物繊維が有効であるというエビデンスは存在しない。この事から、既知の潜在的治療効果は、主に大腸で行われ、小腸ではあまり行われない発酵プロセスに関連している可能性がある。しかし知る限りにおいて、大腸クローン病の発酵プロセスにおける大規模なデータは存在しない。
(・・・続く)
bigvoice212065 at 20:19|Permalink│Comments(0)
2014年01月03日
臨床における食物繊維の有用性3
Tです。
臨床における食物繊維の有用性の続きです。
(以下、誤訳の可能性があるので気になる人は原文を読むことを勧めます。)
どのような食物繊維を使用すべきか?
イヌリンの回腸嚢炎における治療と、P. ovataの潰瘍性大腸炎における維持療法のみが研究発表されており、どちらも有益な結果が出ている。発酵性食物繊維という概念を推定する(?)のは困難である。というのも代謝産物は経路によって異なり、必ずしも酪酸ではない。過剰な硫酸塩還元菌や過剰摂取による硫黄及び窒素化合物の過剰産生の影響がある。腸管内における発酵プロセス及び酪酸生成に対する有効性に関して、このアンバランスな細菌の効果に関するデータも無い。大腸に沿った発酵速度も重要である。潰瘍性大腸炎(UC)は多くの場合、遠位大腸性疾患であり、発酵速度の速い食物繊維は盲腸で発酵可能ではあるが、炎症部位まで届かない(恐らくイヌリンもそうである)。
潰瘍性大腸炎に対して食物繊維を利用する際の勧告
多くの研究データにより大腸炎の病因として、大腸内の繊維多糖の代謝、酸化、産生の不足が考えられるがエビデンスは十分でない。
補足として、日本における発酵大麦のデータ(嚢炎におけるイヌリンの役割や潰瘍性大腸炎の維持療法におけるP. ovataの役割)は強力な文献ではあるが今後さらなる検証が必要である(Recommendation B)。
(・・・続く)
臨床における食物繊維の有用性の続きです。
(以下、誤訳の可能性があるので気になる人は原文を読むことを勧めます。)
どのような食物繊維を使用すべきか?
イヌリンの回腸嚢炎における治療と、P. ovataの潰瘍性大腸炎における維持療法のみが研究発表されており、どちらも有益な結果が出ている。発酵性食物繊維という概念を推定する(?)のは困難である。というのも代謝産物は経路によって異なり、必ずしも酪酸ではない。過剰な硫酸塩還元菌や過剰摂取による硫黄及び窒素化合物の過剰産生の影響がある。腸管内における発酵プロセス及び酪酸生成に対する有効性に関して、このアンバランスな細菌の効果に関するデータも無い。大腸に沿った発酵速度も重要である。潰瘍性大腸炎(UC)は多くの場合、遠位大腸性疾患であり、発酵速度の速い食物繊維は盲腸で発酵可能ではあるが、炎症部位まで届かない(恐らくイヌリンもそうである)。
潰瘍性大腸炎に対して食物繊維を利用する際の勧告
多くの研究データにより大腸炎の病因として、大腸内の繊維多糖の代謝、酸化、産生の不足が考えられるがエビデンスは十分でない。
補足として、日本における発酵大麦のデータ(嚢炎におけるイヌリンの役割や潰瘍性大腸炎の維持療法におけるP. ovataの役割)は強力な文献ではあるが今後さらなる検証が必要である(Recommendation B)。
(・・・続く)
bigvoice212065 at 11:09|Permalink│Comments(0)
2014年01月04日
臨床における食物繊維の有用性4
Tです。
臨床における食物繊維の有用性の続きです。
(以下、誤訳の可能性があるので気になる人は原文を読むことを勧めます。)
IBDに食物繊維を用いる場合の禁忌
禁忌は狭窄及び瘻孔の存在である。機械的合併症の可能性がある。粗く不十分に発酵した食物繊維の利用を避けるのはこの場合、必須である。やわらかく発酵した食物繊維は安全とかもしれないが、近位狭窄部におけるガスの大量発生は患者に少なくとも不快な症状を与えると考えられる。この勧告に関してはエビデンスに基づくデータは無い。
活動性大腸炎への難発酵性食物繊維の投与は下痢を増加させるかもしれない。しかしこれを支持するデータは不足している。
これからの研究領域
これまで公開されたデータによれば、炎症性腸疾患の研究は次の事に焦点を当てる必要がある。
・望ましい酪酸生成速度を得ること及び大腸全てのセグメント(?)における低pHの維持のための、発酵プロセスの最適化
・酪酸合成を制限する基質である硫黄・窒素の合成の最小化、つまり硫酸還元菌の活性低下及び窒素化合物の合成源の減少
・大腸炎における食物繊維/オリゴ多糖と共生細菌の相乗効果(シンバイオティクス効果)の評価
・小腸の炎症におけるシンバイオティクス効果の探求
(・・・続く)
臨床における食物繊維の有用性の続きです。
(以下、誤訳の可能性があるので気になる人は原文を読むことを勧めます。)
IBDに食物繊維を用いる場合の禁忌
禁忌は狭窄及び瘻孔の存在である。機械的合併症の可能性がある。粗く不十分に発酵した食物繊維の利用を避けるのはこの場合、必須である。やわらかく発酵した食物繊維は安全とかもしれないが、近位狭窄部におけるガスの大量発生は患者に少なくとも不快な症状を与えると考えられる。この勧告に関してはエビデンスに基づくデータは無い。
活動性大腸炎への難発酵性食物繊維の投与は下痢を増加させるかもしれない。しかしこれを支持するデータは不足している。
これからの研究領域
これまで公開されたデータによれば、炎症性腸疾患の研究は次の事に焦点を当てる必要がある。
・望ましい酪酸生成速度を得ること及び大腸全てのセグメント(?)における低pHの維持のための、発酵プロセスの最適化
・酪酸合成を制限する基質である硫黄・窒素の合成の最小化、つまり硫酸還元菌の活性低下及び窒素化合物の合成源の減少
・大腸炎における食物繊維/オリゴ多糖と共生細菌の相乗効果(シンバイオティクス効果)の評価
・小腸の炎症におけるシンバイオティクス効果の探求
(・・・続く)
bigvoice212065 at 00:30|Permalink│Comments(0)
臨床における食物繊維の有用性5
Tです。
臨床における食物繊維の有用性の続きです。
(以下、誤訳の可能性があるので気になる人は原文を読むことを勧めます。)
便秘・下痢及び過敏性腸症候群
食物繊維が大腸に到達し、特定の効果を発揮する(いくつかの食物繊維は膨張し、他のものは発酵する)ことが充分にわかっている。発酵プロセスは短鎖脂肪酸、H2、CO2、バイオマスを増加させる。発酵速度は食物繊維の物理的化学的特性に依存する。発酵の生理学的結果は多様であり、そのうちのいくつかは人の疾病に重要な意味を持つ。大腸内における食物繊維の効果は、大腸疾患において食物繊維を用いるのに合理的であった。
エビデンス
難消化性デンプンはいくつか非デンプン多糖類の属性を示す、つまり発酵により短鎖脂肪酸の生産や他の結果を生む基盤をもつ。難消化性デンプンは便重量を増加させる。平均して1.5g/g難消化性デンプンを供給することで便重量を増加させる(?)が、生ふすま(7.2g/g繊維供給)や果物・野菜(6.0g/g 繊維供給)ほど効果的ではない(エビデンスレベルI)。
一方で、発酵性食物繊維は短鎖脂肪酸を増加させ、大腸におけるNa及び水分の吸収を増やす。大豆多糖類は小児の急性及び抗菌薬誘発性下痢症においていくつか有益な効果を示した。さらに、経口補水液に部分的に加水分解されたグアーガム(PHGG)やデンプンを加えたものは大腸に到達し、小児の急性及び慢性下痢症やコレラ患者に対して有益な効果を示した。(エビデンスレベルI)。
(・・・続く)
臨床における食物繊維の有用性の続きです。
(以下、誤訳の可能性があるので気になる人は原文を読むことを勧めます。)
便秘・下痢及び過敏性腸症候群
食物繊維が大腸に到達し、特定の効果を発揮する(いくつかの食物繊維は膨張し、他のものは発酵する)ことが充分にわかっている。発酵プロセスは短鎖脂肪酸、H2、CO2、バイオマスを増加させる。発酵速度は食物繊維の物理的化学的特性に依存する。発酵の生理学的結果は多様であり、そのうちのいくつかは人の疾病に重要な意味を持つ。大腸内における食物繊維の効果は、大腸疾患において食物繊維を用いるのに合理的であった。
エビデンス
難消化性デンプンはいくつか非デンプン多糖類の属性を示す、つまり発酵により短鎖脂肪酸の生産や他の結果を生む基盤をもつ。難消化性デンプンは便重量を増加させる。平均して1.5g/g難消化性デンプンを供給することで便重量を増加させる(?)が、生ふすま(7.2g/g繊維供給)や果物・野菜(6.0g/g 繊維供給)ほど効果的ではない(エビデンスレベルI)。
一方で、発酵性食物繊維は短鎖脂肪酸を増加させ、大腸におけるNa及び水分の吸収を増やす。大豆多糖類は小児の急性及び抗菌薬誘発性下痢症においていくつか有益な効果を示した。さらに、経口補水液に部分的に加水分解されたグアーガム(PHGG)やデンプンを加えたものは大腸に到達し、小児の急性及び慢性下痢症やコレラ患者に対して有益な効果を示した。(エビデンスレベルI)。
(・・・続く)
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