海外糖尿病ガイド

2013年01月11日

ADA&EASD合同の2型糖尿病のガイドラインその6

Tです。
続きです。

・Implementation strategies(治療戦略)
①初期薬物療法
一般的にはメトホルミンが、禁忌であったり認容できない場合を除いて、最も費用対効果の高い第一選択薬であると考えられる(図2及び図の補足)。
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ライフスタイルへの介入だけではHbA1cの目標値を達成できない、もしくは達成できそうに無い患者に対してはすぐに開始する。消化器系副作用があるので低用量から開始して徐々に増量すべきである。高いベースラインの患者(HbA1c9.0以上)の患者が単剤療法で正常に近い目標値を達成できる確率は低い。非インスリン製剤の2剤併用もしくはインスリンも考慮すべきである。患者が重度の高血糖症状と/もしくは極めて高い血中グルコース濃度(300~350mg/dl以上)もしくはHbA1c(10.0~12.0%以上)の場合はインスリン療法が最初から強く考慮されるべきである。異化作用が見られたり、もちろん著しいインスリン欠乏によりケトン尿が見られる場合はインスリンは必須である。1型糖尿病の兆候が無く、病状が安定し、糖毒性も無くなり、代謝状態も良くなったならインスリンの一部もしくは全てを徐々に減らすことは可能である。その際は血糖低下薬を非インスリン製剤に切り替えるかもしくは併用する。
メトホルミンが使えない場合、他の経口薬つまりSU剤/グリニド、ピオグリダゾン、DPP-4阻害剤を選ぶ。体重減少が治療において重要になることがあるが、GLP-1作動薬による初期治療が有効であろう。あまり使われない薬剤(α-GI、コレセベラム、ブロモクリプチン)も患者によっては使われるかも知れないが、そのささやかな血糖低下作用と副作用を考慮すると、あまり良い候補とはいえない。患者の嗜好、性格、副作用の感受性、体重増加や低血糖を起こす可能性が薬剤選択の大きな役割を果たすべきである。



bigvoice212065 at 22:27|PermalinkComments(0)

2013年01月12日

ADA&EASD合同の2型糖尿病のガイドラインその7

Tです。
続きです。
②二剤併用療法
メトホルミンからさらに進んだ血糖降下療法の仮想シーケンスは図2にも記載している。単剤療法で~3ヶ月以上HbA1cの目標が達成/維持されない場合、次のステップとして二剤目の経口薬、GLP-1作動薬、もしくは基礎インスリンを追加する。特に、HbA1cが高いほどインスリンが必要となる。大体において、二剤目の追加によってHbA1cはおおよそ~1%減少する。アドヒアランスも検討した上で臨床的に意義のある血糖低下が見られない(たとえばノンレスポンダーとか)場合、薬剤を中止し、他の作用機序の薬剤に切りかえるべきである。長期間の効果比較試験のデータが不足しており、メトホルミンとどの薬剤が最も有効か、正式に提言することはできない。
従って、患者ごとに薬剤の利点と欠点を考慮し、決めるべきである。

いくつかの血糖低下薬は体重の増加につながる。これによりインスリン抵抗性マーカーおよび心血管系リスクが悪化する可能性がある。チアゾリジンに関しては当てはまらないかもしれない。チアゾリジンによって体重増加は起こるがインスリン抵抗性は改善するようだ。治療によって起こる体重増加が大幅な心血管系リスクにつながる明確なエビデンスは無いが、最適な薬剤を選択し、用量を調節して不要な体重増加を防ぐことは依然として重要である。

全ての薬剤に関して検討されるべきことは、全体としての認容性である。しばしば見られる低血糖が重篤であれば大打撃だが、マイルドなら単に焦らされる程度である。消化器系副作用は耐えられる患者とそうでない患者がいる。体液貯留は臨床上問題になる場合と、単に美容面での問題である場合がある。骨折リスクは閉経後女性に関しては重要であろう。

多くの状況において、血糖低下薬を選ぶ際、コストが重要な問題であることは認めざるを得ない。リソースが限られた条件下では安価な薬剤を選択すべきである。しかし考慮しなければならないのは、副作用やそれに関わるモニタリング自体がコストに影響するという事である。また、合併症の予防が、長期にわたる疾病にかかるコストの削減につながる可能性が高い。

bigvoice212065 at 20:26|PermalinkComments(0)

2013年01月13日

ADA&EASD会合同の2型糖尿病のガイドラインその8

Tです。
続きです。

③三剤併用療法
いくつかの研究により、二剤併用でなお血糖目標を達成できない場合に三剤目の非インスリン薬を追加することの有用性は確認されている。しかしこの時点で、普通ならインスリンの併用が推奨される。糖尿病によってβ細胞の損失が進行していくので、多くの患者、特に罹病期間の長い患者は最終的にはインスリン療法に切りかえる必要がある。HbA1cの値によっては(8.5%以上)、他の治療薬では充分な有益性はまず得られない。もし三剤併用をインスリンの併用無しでやる場合、患者を細かくモニターし、うまくいかない場合には速やかにアプローチを考え直すべきである。何ヶ月も高血糖でコントロールのつかない状況は避けるべきである。

三剤併用の際の重要な考え方として、作用機序を補い合うように薬剤を併用すべきである(図2)。薬剤の数が増えると副作用や薬物相互作用の可能性が高まり、コストが上昇し、患者のアドヒアランスにネガティブな影響を与える。根拠、有益性、それぞれの薬物の副作用に関して、患者と話し合うべきである。患者の臨床的特徴によってどのコンビネーションの反応が良いか悪いかは、残念ながら充分に証明されてはいない。

bigvoice212065 at 02:57|PermalinkComments(0)

2013年01月15日

ADA&EASD合同の2型糖尿病のガイドラインその9

Tです。
少しづつですが、終わりも見えてきました。
あと6~7回位で終われそうな感じです。何とか1月中には決着を付けようと思います。
それでは続きです。
誤訳の可能性もあるので、興味のある方は原文を読むことをお勧めします。

④インスリンへの移行と単位調節
多くの患者が注射療法の導入を嫌がるが、医師がその重要性を感じている場合、たいていは支援や教育によって沈黙を打ち破ることが出来る。インスリンは通常は低用量から開始すべき(0.1~0.2単位/kg/日)だが、重度の高血糖の際は高用量(0.3~0.4単位/kg/日)から始めるのが妥当である。最も簡便な方法は基礎インスリンの1回打ちであり、投与のタイミングは患者のスケジュールと全体的な血糖プロフィールによって決める方法である(図3)。
4
インスリンに関して、全般的な説明は今回のステートメントの範疇ではないが、患者個々のインスリンの増量に関してはアルゴリズムに従って教えることができる。もし高血糖が続く場合には少量づつ増量していくのが基本である。例えば、1日あたり1~2単位の増量(もしくはすでにインスリンが高用量の場合は5~10%の漸増)を週1~2回行うことは、食前血糖が事前目標より高い場合は妥当なアプローチである。目標値に近づくにつれて、用量調節は少量づつ、ゆっくりやるべきである。もし低血糖が生じた場合、減量するのが賢明である。自己注射に関して、頻繁なコンタクト(電話やEメール)を医師と取ることが必要である。Practitionerももちろん自分で基礎インスリンの調節はできるが、日常診療よりも密に患者とコンタクトを取らなければならない。毎日の自己血糖測定はこの時にはとても重要である。インスリンの投与量が安定した後には測定頻度は考え直すべきである。



bigvoice212065 at 22:57|PermalinkComments(0)

2013年01月17日

ADA&EASD合同の2型糖尿病のガイドラインその10

Tです。
続きです。

食事の際のインスリン追加投与を、食後高血糖が顕著な際(180mg/dl以上)には考慮しなければならない。この事が示唆される状況は、基礎インスリンを3~6ヶ月調節して食前血糖は目標値内だがHbA1cは目標に達していない状況である。基礎インスリンの増量により、夜間や食事時に血糖が大きく下げる場合も同様であり、基礎インスリンの量を減らして食後インスリンを開始すべきである。基礎インスリンはトータルのインスリン量関わらず空腹時血糖で調節するが、食後インスリン療法は恐らく日々の投与量は0.5単位/kg/日を超え、場合によっては1単位/kg/日になる事もあることをpractitionerは知っておく必要がある。食事の際のインスリン分泌の目的は食事による急激な血糖上昇を抑えることにある。一部の患者では食事による血糖上昇が極端であり、結果として日中のコントロールがうまくいかないこともある。こういう時には2つの方法がある。

精密かつ柔軟な食後血糖をカバーする方法として、 “basal-bolus”療法、つまり基礎インスリンに加えて短時間作用型インスリンを食前に加える方法が挙げられる。1つのアプローチとして、食後インスリンの追加はまず血糖の上昇が最大となる食事の前に投与する。絶対ではないが多くの場合、最大の炭水化物量を摂取する食事は夕食である。2回目の注射は血糖の上昇が2番目に大きい食事前(多くの場合朝食)に、3回目の注射は血糖の上昇が最も小さい食事の前(多くの場合昼食)に投与する。基礎インスリンの後、この追加するレジメンの実際の血糖に与える有益性は多くの患者にはささやかなものでしかない。だからこそ、もう一度述べるが、治療の個別化が鍵なのだ。対処する必要のある高血糖の程度や患者の全般的な能力を織り込む必要があるのだ。重要なのは、自己測定のデータの傾向が、コントロールを最適化するためのインスリンの調節や高度なレジメンの用量調節を助けてくれるということである。

2つ目の方法として、より簡便であるが柔軟性の劣る方法、“premixed”インスリン、つまり中間型インスリンとレギュラーインスリンもしくは超速効型インスリンアナログとの固定されたコンビネーションから成るインスリン製剤が挙げられる。慣習的に1日2回、朝夕食前に投与される。一般的に基礎インスリン単独療法と比較して、混合型のレジメンのほうがよりHbA1cを下げる傾向にあるが、軽度の低血糖や体重増加がしばしば起こる。不利な点として、長時間作用の成分を含むために短時間作用の調節ができない点である。従って、この戦略はやや柔軟性に欠けるが特定の患者には適切であると考えられる。つまり食事が規則的で基礎インスリンから進行したシンプルなアプローチが必要な患者には適切である。(古くてあまり用いられない2回打ちのバリエーションとして “split-mixed” 、つまり患者によりレギュラーもしくは超速効型インスリンの量を調節し、中間型インスリンの量を固定する方法が知られている。このやり方なら自由度が上がる。)


bigvoice212065 at 22:32|PermalinkComments(0)
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