抗菌薬の管理

2013年01月28日

antimicrobial stewardshipについて その1

Tです。
感染制御に関わる薬剤師、及び医師であればantimicrobial stewardshipという単語を耳にしたことがある、もしくは良く知っている人も多いと思います。
俺は恥ずかしながら、単語としては聞いたことはあっても内容は良く知らずこれまでやってきましたが、
良い機会なので勉強しようと思います。
奈良県立医大感染症センターのブログによると、
「antimicrobial stewardship
とは,抗菌薬の適正使用から耐性菌問題まで含めた包括的な対策の事を指します。日本では抗菌薬の選択はほぼ主治医の権限でなされおり、医師によって抗菌薬の適正使用に関する理解度が異なります。よって感染症科医や薬剤師が抗菌薬の使用を適正に管理して耐性菌の増加を防ぐとともに、抗菌薬による副作用や合併症を未然に防止することによって現在、そして未来の患者さんの予後を改善します。」
と書いてあります。
2007年に⽶国感染症学会と⽶国医療疫学学会からガイドラインが発表されているようです。
http://cid.oxfordjournals.org/content/44/2/159.full.pdf+html

antimicrobial stewardshipに関して、現在最も新しい提言は恐らく2012年の
「Policy Statement on Antimicrobial Stewardship by the Society for Healthcare Epidemiology of America (SHEA), the Infectious Diseases Society of America (IDSA), and the Pediatric Infectious Diseases Society (PIDS)」
http://www.jstor.org/stable/10.1086/665010

ではないかと思います。
数ページの内容なので、これも次回より数回に分けて和訳してみようと思います。


bigvoice212065 at 21:31コメント(0) 

2013年01月29日

antimicrobial stewardshipについて その2

Tです。
SHEA/IDSA/PIDS Policy Statementをこれから和訳していきますが、例のごとく誤訳の可能性があるので、興味のある人は原文を読むことを勧めます。

  「米国医療疫学学会、米国感染症学会、小児感染症学会によるantimicrobial stewardshipに関する提言」
abstractは省略。

広く認められていることだが、効果的な抗菌薬治療の有効性は臨床医学において最も重要な発展の1つである。臨床で抗菌薬が使われるようになったのは1930~1940年代に始まった。サルファ剤、ペニシリン、ストレプトマイシンが使えるようになったのだ。早くから認識されていたことだが、抗菌薬にさらされた細菌は生き残るために進化するため、抗菌薬の有効性を維持するためには慎重に使う必要があることが懸念されていた。アレクサンダー・フレミング先生が1945年6月26日にニューヨークタイムズで以下の注意喚起を発表した。
「・・・細菌はペニシリン及びペニシリンを服用している宿主に耐性を獲得し、増殖の速い菌は増殖し、外に広がっていく。・・・ペニシリンを軽々しく服用した人は、ペニシリン耐性菌に感染し、死亡した人に対して道徳的責任がある。私はこのような悪行が避けられることを願っている。」
(注:フレミング先生の注意喚起はなんとなく意味はわかるものの、うまく訳しきれていないことに関しては自覚できています。この注意喚起は、彼がノーベル賞を受賞した際に講義したNobel lectureの記録の後半を読むと良くわかりますので、英文ですが読んでみることを勧めます。)
http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1945/fleming-lecture.pdf

20世紀後半になると、合成化合物を含めて抗菌薬の種類は数多くなり、臨床で使用できるようになった。抗菌薬を使った感染制御はあらゆる分野、特に手術医学、移植医学、オンコロジー、集中治療医学に大きな影響を与えた。ペニシリン耐性黄色ブドウ球菌は1945年に臨床検体で発見された。メチシリン耐性株は1961年に登場した。米国のサーベイランスシステムによれば、1999年までに、黄色ブドウ球菌におけるメチシリン耐性は、ICUの患者から分離された黄色ブドウ球菌のうち、53%以上に認められた。MRSA株は1990年代に登場し、市中患者に感染症の原因となり、2000年には米国のほとんどの地域で一般的になった。



bigvoice212065 at 23:42コメント(0) 

2013年01月31日

antimicrobial stewardshipについて その3

Tです。
最近、訪問者数が急速に伸びています。
antimicrobial stewardshipに興味のある人は意外に多いのかもしれません。
前回の続きを訳していきますが、今回までは序文の訳で終わると思います。Recommendationsの内容は恐らくその4かその5辺りからになると思います。また、何度も繰り返しますが、誤訳の可能性があるので原文を読むことを勧めます。

(前回の続き)
過去30年で、多剤耐性の肺炎球菌、淋菌、サルモネラや超多剤耐性結核が市中の患者から見つかった。バンコマイシン耐性腸球菌やバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌も出現した。超多剤耐性のグラム陰性桿菌、例えばカルバペネマーゼ産生肺炎桿菌や他の機序のカルバペネム耐性腸球菌属、ESBL産生腸球菌、緑膿菌、アシネトバクターは医療現場で患者に広く普及し、そのうちのいくつかのケースではpanresistant、つまり利用できる抗菌薬全てに耐性であった。

残念なことだが過去10年間、新しい抗菌薬の製造承認は減ってきている。使える抗菌薬は使い果たし、感染症治療能は著しく低下している。耐性菌感染症は罹患率や死亡率の上昇につながるだけでなく、医療費も飛躍的に増大させる。皮肉なことに、21世紀に入り治療手段の無い細菌感染が発生している。薬剤耐性菌をコントロールするためには多面的なアプローチが必要である。つまり、充分かつ適切な抗菌薬を使用することや、確実に起因菌およびその薬剤感受性を検出して迅速に診断することであったり、力強い感染予防、制御、そしてantimicrobial stewardship programを推進することである。この文献はantimicrobial stewardshipに関する問題に焦点をあてている。他の重要な問題、つまり薬剤耐性菌の出現、伝播、およびマネジメントは別の文献に記されている。

SHEAとIDSAはantimicrobial stewardshipのニーズを認識して「Guidelines for the Prevention of Antimicrobial Resistance in Hospitals」を1997年に発表した。2007年に同学会はantimicrobial stewardshipの概念を推進した。その時発行したのが「Guidelines for Developing an Institutional Program to Enhance Antimicrobial Stewardship」である。その中で述べられていることは、multidisciplinary teams(うまい訳がわかりませんが、ICTみたいなものでしょうか?)を作り、急性期医療において抗菌薬の使用や患者のケアを見直し、改善することである。最近、IDSAは「Combating Antimicrobial Resistance: Policy Recommendations to Save Lives」を発表している。これは全ての米国の医療施設にantimicrobial stewardship programを導入し、感染予防や制御を向上させることを要請したものである。その他の推奨事項は、異なる医療環境におけるantimicrobial stewardship programの最適な要素および目標の研究であったり、antimicrobial stewardshipを広めるための教育であったり、新規に承認された抗菌薬の過剰処方を防ぐための新たな仕組みであったり、新しい抗菌化学療法の模索であったり、ワクチンの開発、適切なケアを可能にする(ウイルスが起因のため抗菌薬の使用を回避できたりする)迅速診断テストの開発、などである。

小児科領域のantimicrobial stewardshipの重要性を認識し、PIDSは小児に対するantimicrobial stewardshipの重要性について年次集会を開催した。PIDSとSHEAは共同してantimicrobial stewardship委員会を作り、入院患者・外来患者における抗菌薬使用や、特殊な集団に関してのantimicrobial stewardship、抗菌薬の使用に関する教育や抗菌薬の使用と管理に関する研究に対処している。今回のSHEA、IDSA、PIDSの共同のポジションペーパーは、antimicrobial stewardshipの問題に関してpublic policyの必要性に焦点をあてる。


・・・今日はアルコールに酔っているせいか、いつもより訳がひどい気がする。(元々あまり英語は得意ではないですが。)誤訳の可能性があるので原文を読むことを勧めます。また、ここはこう訳すべき、などの指摘があったら今後の参考にもなるのでコメントしていただけると有難いです。

bigvoice212065 at 23:54コメント(0) 

2013年02月02日

antimicrobial stewardshipについて その4

Tです。
続きです。

・Definition(定義)
antimicrobial stewardshipとは投与量、治療期間、投与経路などを含めた最適な抗菌薬治療を促進することで、抗菌薬が適切な使用量か調べる・あるいは改善するために調整介入を行うことである。antimicrobial stewardshipの主な目的は、抗菌薬の使用に関して最良の臨床アウトカムを達成すること、つまり毒性や副作用を最小限に抑え、耐性菌の選択圧を最小限に抑えることである。また、antimicrobial stewardshipは次善の抗菌薬使用に起因する過度なコストも抑制することが出来るかもしれない。(注:抗菌薬の治療成績を上昇させて、治療失敗後に新たな抗菌薬を使う頻度を減らすことでコスト削減につながる、という感じだと思います。)

・Recommendations(提言)
①antimicrobial stewardship programは調整機構を介して要求されるべきである。
現在、antimicrobial stewardshipによって抗菌化学療法を最適化するよう定めた国法はない。州法レベルでも限られている。

カリフォルニア州上院法第739条は2008年1月1日より施行された。カリフォルニアの公衆衛生部(CDPH)が全国の急性期病院に要求したのは、抗菌薬の使用を評価するプロセスを作り、適切な代表者及び適正使用に関わる委員会が共同して管理することである。この法は、この類でははじめてのものであったが、病院が抗菌薬使用を改善するために介入すること、つまりantimicrobial stewardship programを規定したものではなかった。しばらくしてCDPHが学んだのは、業務上あいまいな言い回しをつかうことで多くの病院が上記の定義のようなantimicrobial stewardship programがなくても法律の要求を満たすことができることだった。一方で、カリフォルニアにおいて導入に成功したantimicrobial stewardship programは協働したスタッフ、戦略、基準は様々なものだった。従って、具体的過ぎる基準に変更することはそれぞれの施設固有の特性に基づいてしっかりしたantimicrobial stewardship programを、人材の限られた病院が作り上げることを妨げるかもしれない。

カリフォルニアの急性期病院の予備評価によれば、23%が上院法第739条によってantimicrobial stewardship programをスタートさせた。カリフォルニアの法律の要件から学んだ教訓として、法規制はantimicrobial stewardship programの人材と資金を病院に管理するよう説得すためには重要である、ということである。重要なことは、上記で定義されたantimicrobial stewardship programという単語を用いることである。しかし同時に重要なのは病院が柔軟性を持って、自施設におけるantimicrobial stewardship programの目的を最大限達成できるようにすることである。現在の法律は1つの州に限定され、病院における抗菌薬の使用制度のみに焦点があてられている。我々はあらゆる医療環境にわたる包括的なantimicrobial stewardship programの広範な実施を支援する。抗菌薬耐性は医療の質、患者の安全、公衆衛生に著しく影響を与える重要な問題であり、耐性菌の出現と伝播を制限するためのantimicrobial stewardshipやその他の努力は患者ケアに関わる全ての医療機関が責任を負うと見なされなければならない。

bigvoice212065 at 17:48コメント(0) 

2013年02月03日

antimicrobial stewardshipについて その5

Tです。
続きです。
SHEA,IDSA,PIDSは、the Centers for Medicare and Medicaid Services (CMS)が、医療機関にantimicrobial stewardship programを作成し、導入する事を要求すべきだと提言する。これは関連する規制のガイドラインの解釈を拡張させることで用件を組み込むことが可能である。病院、介護施設、長期急性期医療施設、外来手術センター、透析センターを含む全ての医療機関は、IDSAとSHEAが発表した「Guidelines for Developing an Institutional Program to Enhance Antimicrobial Stewardship」をモデルとしたantimicrobial stewardship programを作成し、導入すべきである。プログラムに最低限要求されるのは以下のことである。

A:医師の指示・指導の下、多職種間のantimicrobial stewardshipチームの作成。最低でもチームの1人以上のメンバーがantimicrobial stewardshipのトレーニングを受けているべきである。チームメンバーの数は施設の規模や事情によって異なる。チームメンバーは医師、薬剤師、細菌検査技師、infection preventionist(うまい訳が見つかりません。院内感染の疫学的分析をする人たちのようなので、日本では医師、薬剤師、看護師、検査技師のいずれかが代行していると思われます。)が望ましいが、これに限定はされない。

B:抗菌薬処方は重複しない、臨床上の必要性が実証されたものであること。

C:一般的な感染症のマネジメントのためのマニュアルの作成。

D:抗菌薬使用の改善のための追加の介入。
  ・多剤併用による不必要な抗菌スペクトルの拡大
  ・細菌感染ではない、もしくは汚染や定着した細菌の検体を基にした抗菌化学療法
  ・エンピリカルな治療の際の過度もしくは不足した抗菌スペクトル
  ・検体から確認された病原体を充分に治療できない抗菌化学療法

E:院内基準による制度レベルで抗菌薬使用状況を調べるプロセスをつくること。

F:主要な菌に対する抗菌薬感受性率を示す、施設ごとのantibiogramを定期的に配布する事。

bigvoice212065 at 09:51コメント(0) 
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