骨粗鬆症治療薬のまとめ
2013年03月07日
骨粗鬆症治療薬のまとめ11
続きです。
②バゼドキシフェン
骨格系および脂質代謝に対し、選択的にエストロゲン作動薬として作用するが、乳房組織および子宮内膜組織に対してはエストロゲンの好ましくない作用を示さない。
・骨密度に対する効果はあるか
海外第Ⅲ相試験において、腰椎骨密度は6ヵ月後に有意な上昇が認められ、3年後まで持続した。大腿骨骨密度に関しても同様に有意な上昇が認められた。
国内第Ⅱ相試験では腰椎骨密度は、24週後に有意な上昇が認められ、2年後まで持続した。大腿骨骨密度に関しても有意な増加が認められた。
・骨折抑制効果はあるか
海外第Ⅲ相試験において、プラセボと比較して新規椎体骨折発生率の相対リスク低下率は、42%の有意な低下が認められた。新規椎体骨折発生率の有意な低下は5 年間の継続投与においても維持された。
海外第Ⅲ相試験における非椎体骨折の発生率について、全体の集団ではプラセボ投与群との間に有意差は認められなかった。しかし骨折リスクの高い閉経後女性のサブグループの追加解析で、プラセボあるいはラロキシフェン60mgと比較して20mg投与群で有意な低下が認められた。
FRAXモデルにより算出された「10年以内の骨折発生確率」を要因とした追加解析において、骨折発生リスクが高い患者ほど、治療効果がより高い傾向が示唆された。
・評価と推奨
骨密度:グレードA
椎体骨折:グレードA
非椎体骨折:グレードB
大腿骨近位部骨折:グレードC
骨粗鬆症治療薬のまとめ12
続きです。
〈カルシトニン薬〉
破骨細胞や前破骨細胞のカルシトニン受容体に作用し、その機能を抑制する骨吸収抑制薬である。
またカルシトニンには、主に中枢セロトニン神経系を介した鎮痛作用があり、明確な鎮痛効果を有する。
現在、国内におけるカルシトニン薬の効能・効果は「骨粗鬆症における疼痛」であり、骨粗鬆症に起因する疼痛を有する症例に対し有効である。
・骨密度に対する効果はあるか
エルカトニン20 単位週1 回投与の骨密度上昇効果については、これまでRCTが4 件報告されている。このうちの2 件とCCT、ケースシリーズにおいて、単独投与あるいは乳酸カルシウムとの併用により、対照群に比して腰椎骨密度の上昇が認められた。他のRCTでは橈骨、第二中手骨の骨密度上昇も認められた。
単独投与に比べ,活性型ビタミンD3 薬と併用したほうが腰椎骨密度上昇が大きいとする報告やエストロゲンと併用したほうが骨密度増加が大きいとする報告がある。
・骨折抑制効果はあるか
カルシトニン薬の骨折抑制効果については、エルカトニンで1 件、サケカルシトニンで2 件のRCTが報告され、いずれの試験でも椎体骨折抑制効果を検討している。
エルカトニンを使用したRCTでは、20 単位週1 回の2 年間の投与によって椎体骨折発生率を対照群に比較して59%低下させたが、これ以外にエルカトニンの骨折抑制効果を証明した報告はない。
カルシトニン薬の大腿骨近位部骨折、その他の非椎体骨折の抑制効果は証明されていない。
・QOLに対する効果はあるか
カルシトニン薬には鎮痛作用があり、二重盲検下のRCTで、エルカトニンが低用量投与群に比べて有意に骨粗鬆症に伴う腰背痛の改善効果を示した。
椎体骨折により生じた疼痛に対する鎮痛効果に関するシステマティックレビューでは治療開始後1 ~ 4 週間にわたり、継続的に日常生活動作での疼痛スコアが有意に低下すると結論された。
新鮮椎体骨折例を対象とした国内のオープンRCTでも治療開始2 週後に有意な疼痛改善効果が得られてい
る。
活性型ビタミンD3 薬と比較して、有意な下肢痛改善が認められている。
カルシトニン薬の鎮痛効果は治療例のQOL改善に寄与する。リハビリテーションの効果(歩行能力)がエルカトニン投与によって増強されることも報告されている。
したがって、疼痛改善効果、QOL改善効果に関して推奨(グレードA)される。
・推奨と評価
骨密度:グレードB
椎体骨折:グレードB
非椎体骨折:グレードC
大腿骨近位部骨折:グレードC
2013年03月08日
骨粗鬆症治療薬のまとめ12
続きです。
〈テリパラチド〉
骨密度低下の強い骨粗鬆症やすでに骨折を生じている重篤な骨粗鬆症に用いられる。
副甲状腺機能亢進症などで血中のPTH濃度が持続的に上昇すると、骨のリモデリングが促進され骨組織量は減少する。しかし、PTHを間欠的に投与すると骨吸収抑制薬と異なり、骨形成の際に産生されるⅠ型コラーゲンの産物であるP1NPが特異的に上昇し、リモデリングの促進とともに骨組織量は増加する。
本薬はラットへの長期投与で骨肉腫の発生がみられ、安全性の面から使用期間が制限されている。
フォルテオ(自己注射用製剤、連日投与)は、投与期間が24ヵ月となっている。中断したのち再投与する場合には、投与日数の合計が24ヵ月を超えないようにしなければならない。
テリボン(皮下注製剤、週1回投与)は、投与期間は72週間までとなっている。中断したのち再投与する場合には、投与期間の合計が72週間を超えないようにしなければならない。
また、治療終了後は、適切な骨吸収抑制薬を使用して骨強度の維持に努める必要がある。
・骨密度に対する効果はあるか
骨密度上昇効果は腰椎、大腿骨近位部とも認められる。
テリパラチドと経口ビスホスホネートの併用は推奨されていない。
橈骨の骨密度は1 ~ 2%低下するが橈骨の骨折発生率はプラセボ群に対し、ほぼ50%に低下する。新しい骨基質の形成・添加と外径の拡大などが関係して、橈骨ではDXA測定による見かけ上の骨密度低下が生じると考えられる。
・骨折抑制効果はあるか
骨折試験では、椎体骨折、非椎体骨折のどちらについても顕著な抑制効果が発揮されている。
大腿骨近位部骨折は抑制するとの報告はない。
フォルテオはプラセボ群に対して、平均19 ヵ月の観察で,椎体骨折の発生率は65%低下した。SQ2 およびSQ3 の変形を示した椎体骨折の発生率はプラセボ群に比べて90%低下していた。非椎体骨折はプラセボ群に比べ53%低下していた。
テリパラチドによる骨折リスクの低下は年齢、ベースラインの骨密度、既存の椎体骨折などには影響されなかった。
・QOLに対する効果はあるか
骨折試験のQOLの検討では、フォルテオ群とプラセボ群とで有意差を認めなかった。
しかし腰痛については、プラセボ群23%に対しフォルテオ群17%(p < 0.02)であった。
テリパラチドの腰痛改善効果は,メタアナリシスでも確認されている。
・評価と推奨
骨密度:グレードA
椎体骨折:グレードA
非椎体骨折:グレードA
大腿骨近位部骨折:グレードC
テリパラチドはいわゆる第一選択薬ではない。ビスホスホネート、SERMなどの治療でも骨折を生じた例、高齢で複数の椎体骨折や大腿骨近位部骨折を生じた例、骨密度低下が著しい例などで使用が勧められる。
骨粗鬆症治療薬のまとめ13
Tです。
続きです。
骨粗鬆症治療薬のまとめは今回が最後です。
これまでのまとめは日本骨代謝学会HPより閲覧できる「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2011」を参考にしています。気になる人はHPで確認して下さい。
〈病態に対応した薬物選択指針〉
システマティックレビューによれば、椎体骨折、非椎体骨折、および大腿骨近位部骨折のそれぞれのリスクが高い例に第一選択薬として使用しうる薬物は、アレンドロネート・リセドロネートであり、副甲状腺ホルモン薬は前二者の高リスク例に、SERMは椎体骨折の高リスク例に第一選択薬として使用しうるとされた。
ミノドロン酸については椎体骨折の高リスク例、エルデカルシトールは椎体骨折高リスク例、非椎体骨折高リスク例などに使用されると考えられるが、この位置付けについては今後ともデータの蓄積が必要である。
ビタミンK2薬、活性型ビタミンD3薬については椎体骨折に対する効果が提示されているが、その対象のリスクの程度が正確に評価できないため、エビデンスレベルは低い。
〈併用療法に関するエビデンス〉
現時点で併用療法に関するレベルの高いエビデンスは皆無である。
2008年の米国ガイドラインでは併用療法について、骨折リスクのデータがない現況では費用対効果、副作用などを考えながら慎重に行うべきであるとコメントしている。
2010 年のカナダの骨粗鬆症治療ガイドラインでは、骨折予防のために複数の骨吸収抑制薬を併用しないように推奨している。ビスホスホネート薬とSERMや女性ホルモン薬などの同じ骨吸収抑制作用のある薬物を組み合わせるのは作用機序が重複することから理論的とは言い難い。
アレンドロネート単独と、アレンドロネートと活性型ビタミンD3薬の併用
療法の、骨折発生に対する比較検討が行われ、併用群では高度の椎体骨折を有する群における新規椎体骨折発生と、荷重長管骨骨折の発生が単独群に比べ有意に低下した。
したがって、既存椎体骨折が多数存在する例、グレード3の骨折が存在する例などではアレンドロネートと活性型ビタミンD3薬の併用は推奨できる。
女性ホルモン薬治療を行っている骨粗鬆症患者を対象に、そのまま単独治療を継続する群とテリパラチド併用治療を行う群で比較した年間のRCTでは、併用治療群の腰椎、大腿骨骨密度は単独治療群より有意に高くなっていた。
テリパラチドとアレンドロネートの単独療法と併用療法を1年間比較した研究では、それぞれの単独治療群と併用治療群で腰椎、大腿骨頸部の骨密度はいずれも上昇したものの有意差はなく、骨吸収抑制薬であるアレンドロネートの併用によりテリパラチドの骨形成作用の低下が危惧されると報告している。